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秋葉流の考察2

マンガ

(1の続きから)

○A-2、流の憎悪
 流はうしおに憎悪をしました。
 流は自分のプライドを傷つけたうしおを敵視しました。
「こんな世の中であんなヤツがいていいのかよ」
 と言ってうしおを全力で否定する事にしました。

 うしおは中学生です。まだ未熟な中学生対し流はただ憎悪しました。
 うしおが自分を信頼している事さえ利用しました。自分が白面の者側につけばうしおが傷つく事も計算しての事でした。
 流は過去の回想で不良たちをぶちのめしたシーンがあります。
 そこで流は不良に、
「足がひっぱるコトが好きなヤツら」
 と言っています。
 憎悪した流は、結局の所自分が見下していた「足がひっぱるコトが好きなヤツら」と同レベルに堕ちていたのでした。

 

○C-2、流はうしおを殺したかったのか?
 流の目的ですが、とらはばけものなので分かりやすいです。単に退治し消滅させるだけです。
 ではうしおに対してはどうでしょうか。とらと同じようにバトルでうしおに勝利したかったのでしょうか?
 それは違うと思います。
 流はうしおと接しながら自分のつまらなさに気づきプライドをずたずたにされました。その際流は悔し涙を流したと思います。流の目的はそれをやり返す事だと思います。「甘ちゃんの目」をズタズタにしたかったのです。
 
 とらと戦い負けた。→とらを真正面から戦い殺す。
 うしおと接し悔し涙を流した。→うしおをイジメ泣かせる。

 流の目的はこれであったと思います。うしおを殺す事が目的ではなく、単に殺しても目的は達せられないと思われます。
 そして先の話になりますが、結果としてこれは成功しました。
 とらは流との戦いの後、白面の者と戦っているうしおに合流しました。そこで白面の者はとらが流を殺した事を暴露しました。そのことは白面の者との戦いで傷ついていたうしおをさらに絶望へと追いやり、うしおは涙を流しました。
 とらを殺すのではなく、とらに殺される事で流はリベンジをしたのでした。

○A-3、流の作戦
 まず流は白面の者側に付きました。
 とらに対しては、『本気を出せば勝てる』と考え真正面からリベンジを狙いました。
 うしおに対しては、とらを殺し精神的に蹂躙することでリベンジを狙いました。

 

○B-2、とらとの戦いを通じて得たもの
『本気を出せば勝てる』と考え、流は真正面からとらに挑みましたが、結局は敗北しました。とらが流の予想を超えたばけものだったからです。

 しかしその戦いの最中に流の心境に変化がありました。
「天才でもつれーかよ」
 と流の天才性について嘲笑するとらに、
「オレは天才じゃねぇぇぇ」
 と自分のよりどころにしていた天才について自ら否定をしました。
 また、「逃げるのァ今だぜ」というとらに対し、
「おまえと戦うのが…楽しくてよ、そんなコトァ…忘れちまったァ」
 と言いました。

 本来流は天才性を誇り、格下の人間を見下す事を快感としていました。
 その流からしたら、とらの攻撃にボロボロにされたのに「おまえと戦うのが…楽しくて」という言葉は出ないはずでした。
 これはおそらく「新しい生き方」を一歩見つけたために出た言葉ではないかと思います。
 新しい生き方とは、「天才である事に安住する」「格下を見下す」のでは得られず、むしろ虚勢の天才性を否定し、分厚い人生の壁に全身全霊でぶつかる事で掴めるのではないでしょうか。この時、流の停滞した人生は僅かに動きました。

 

○A-4、絶望と憎悪と破滅
 私はうしおととらのテーマは「絶望と憎悪との戦い」だと思っています。

 衾との戦いでは、檜山勇を元気づけ共に槍で衾を突きました。
 はぐれ外堂との戦いでは、水乃緒が諦めかけた時、叱咤し水乃緒にやり返す気力を取り戻しました。
 囁く者達の家で白面の者の分身がうしおの肩を刺しながら「努力が徒労に終わる人間の目って好きよ」と言った時、笑いながら「お前の喜ぶコトなんかゼッテイしてやんねえ」と言い返しました。
 山魚との戦いでは、紫暮は絶望する乗客を説得し威颶離を完成させました。
 またうしお自身も友人達がうしおの記憶を失い孤立した時、とらに救われました。

 

○B-3、うしとの性善説、とらの性悪説
 性善説とは、人間にはもともと善の端緒がそなわっており、それを発展させれば徳性にまで達することができるとする説。
 性悪説とは、人間の本性は悪であり、たゆみない努力・修養によって善の状態に達することができるとする説。
デジタル大辞泉より
 
 うしおは基本的性善説であり、色んな人々の善を信じそれを叱咤して活路を示してきました。
 しかし流に対してはうしおの正義の心は通じず、反対にプライドが傷つき憎しみを持たれる結果になってしまいました。
 とらには性悪説のような教育論は持っていませんでしたが、独特の嗅覚をもって流の悪性を理解し、その限界を示した事で流の改心の端緒をつくりました。


○A-5、風が止まった 
「オレはもうちょっと早く戦っときゃよかったんだなァ」
 それは天才という仮面を外すべきだったという意味だと思います。しかし流は自分一人ではそれが出来ず、とらと真正面から戦い敗北してようやくそれをできました。

 最期に流はとらに対し、
「かなわねえなァ、とら」
 と言っています。流は戦いを通じとらに敬意をもったと思います。
 そして最期にとらに対し、
「手ェ抜いたか?」
 と質問しました。全身全霊をもってぶつかる事で新しい生き方を掴んだ流にしてみれば、相手が手を抜いていたら悲しかったと思われます。
 それに対しとらは、
「抜いてない」と答えました。
 流は「風が…やんだじゃねえか…」と言って死んでいきました。それは完全に絶望と憎悪とプライドによってつくられた彼の世界観が解体され開放された瞬間だったと思います。
 そしてまた、最期の瞬間に本当の誇りを持って生きる新しい生き方を見つけたのかもしれません。